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「権力にたいする人間の闘いとは忘却にたいする記憶の闘いにほかならない」ミラン・クンデラ (チェコの作家)「笑いと忘却の書」より

先ごろ結審した厚生労働省女性キャリア官僚・村木厚子氏の郵便不正事件。裁判の中で検察が描いた事件のストーリーが崩れ去り、検察側の証人までもが次々と法廷で証言を覆し、「自白を強要された」「取り調べで検事に騙された」「保釈をエサに調書へのサインを求められた」など特捜部への批判を口にした。さらに、多くの検面調書(検面)が証拠採用されず、裁判長が特捜部の取り調べに「問題がある」と口にするなど異例の展開をたどり、結局、無罪が確定した。 なぜ巨悪を断つための「正義の機関」はこんな無理筋な事件を手掛けるようになってしまったのか。そこには、2001年10月、小泉政権と当時の検察首脳の間で取り交わされた「けもの道」という名の取引が隠然たる力を発している。三井環が告発した検察の裏ガネ問題。これが世間に公表されることを恐れた検察首脳は「時の権力」に頼み込み、不問に付してもらった。だが、このとき作った大きな借りによって検察は「自民党に利する捜査」を行わざるを得なくなった。 なぜ鈴木宗男氏が狙われ、村岡兼造・元官房長官のみが起訴され、緒方重威・元公安調査庁長官が古巣に逮捕され、小沢一郎氏が党幹事長の座から引きずり下され、村木厚子氏が目を付けられたのか。「検察暴走の論理」がここにある。


三井環プロフィール

1944年愛媛県生まれ。中央大学法学部卒業。72年検事に任官。高知、高松地検次席検事時代には数々の独自捜査を成功させた。1999-2002年、大阪高検公安部長。2002年4月に現職のまま実名で、裏金告発のためテレビ朝日「ザ・スクープ」に出演しようとしたが、その収録の3時間前に、大阪地検特捜部より逮捕された。逮捕はでっち上げであり、口封じのためであるとして、裁判では無実を主張。最高裁まで争ったが、1年8ヵ月の実刑が確定。 2008年10月に収監。10年1月18日に満期出所した。著者に、『告発! 検察「裏ガネ作り」』(光文社)、『検察との闘い』(創出版)、『「権力」に操られる検察』(双葉新書)がある。